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この記事では、新世代のスタンダードとして注目されているウェブのアクセシビリティと操作性について詳しく解説します。
アクセシビリティ(Accessibility)とは、全ての人が障害の有無に関わらず、ウェブサイトやアプリケーションを簡単に使用できるように設計されているかどうかを指します。これは、視覚や聴覚、運動、認知に障害を持つ人々にとっても、情報に簡単にアクセスできるようにすることを目的としています。
ユーザビリティ(Usability)とアクセシビリティはよく混同されますが、実は異なる概念です。ユーザビリティは一般的に「使いやすさ」を意味し、すべてのユーザーが効率よくタスクを完了できるように設計されたインターフェースを指します。一方で、アクセシビリティは特に障害を持つ人々も含む、全てのユーザーがウェブサイトやアプリケーションを使用できるようにすることを重視します。
アクセシビリティは社会的、法的、そしてビジネスの観点からも重要です。社会的には、すべての人々が平等に情報にアクセスできる環境を作ることが求められます。法的には、多くの国でアクセシビリティの基準が設けられ、遵守が求められています。ビジネスの観点からも、アクセス可能なウェブサイトは顧客基盤を広げ、ブランドイメージを向上させる効果があります。
アクセシビリティのガイドラインとは、ウェブサイトやアプリケーションを開発・運営する際に、どのようにすればより多くの人々がアクセスできるようになるかを示すための基準や推奨事項です。これらのガイドラインの目的は、特に障害を持つ人々がウェブサイトやアプリケーションを容易に利用できるようにすることを目的としています。
アクセシビリティのガイドラインにはしばしば「評価レベル」が設定されています。これは、A、AA、AAAといったレベルで示されることが多く、それぞれのレベルが満たすべき基準があります。例えば、AAレベルを目指す場合、色彩のコントラスト比を一定以上に保つ・キーボード操作のみでも全ての機能を使用できるなどの基準が含まれます。この評価レベルが高いほど、より多くのユーザーに対応した設計がされていると言えます。
国際的に認知されているアクセシビリティのガイドラインとしては、W3Cが提供するWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)があります。これは多くの国で採用されており、公共機関や大企業でも積極的に取り入れられています。例えば、アメリカの政府機関では、ウェブサイトがWCAGに準拠していることが法的にも求められています。また、日本でも、オリンピックやパラリンピックの公式ウェブサイトでこの基準が用いられた事例があります。
弊社での事例としては国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)さんのホームページを「WCAG 2.1」の基準で制作しました。
『国立研究開発法人物質・材料研究機構』
現代においてのアクセシビリティのアプローチは、テクノロジーと社会的認識の進展に伴って大きく変わってきました。具体的には、AIや機械学習を活用して、ユーザーが持つ独自のニーズや制約に柔軟に対応する方法が研究されています。さらに、ユーザーのフィードバックをリアルタイムで取得し、それを元にサービスを改善する機敏な開発手法も一般化しています。
成功事例として、BBCのウェブサイトは、キーボードナビゲーションやテキストサイズの変更、コントラストの調整など、さまざまなアクセシビリティ機能を持っています。特に視覚や聴覚障害者を考慮したコンテンツ提供が評価されており、その結果、このウェブサイトは障害者だけでなく、高齢者にも使いやすいと評価され、多くの人に見られるウェブサイトとなりました。
アクセシビリティを高めるためにはいくつかの要点があります。まず、ウェブサイトやアプリの設計段階からアクセシビリティを考慮することが基本です。具体的には、色彩のコントラストを適切に設定する・テキストを読みやすいフォントとサイズで表示する・などがあります。また、利用者からのフィードバックを積極的に取り入れ、継続的な改善を行うことも重要です。
これらのポイントを押さえつつ、全てのユーザーが快適にウェブサービスを利用できるよう、日々の開発と運営に努めることが求められます。
ウェブサイトにおいて、色とコントラストは非常に重要な要素です。特に視覚障害を持つ人々や高齢者にとって、色とコントラストの選択は読みやすさに直結します。具体的な手法としては、テキストと背景のコントラスト比を高める・色盲の人々も区別しやすい色を使用するなどがあります。
テキストスタイルもアクセシビリティに大きく影響を与えます。例えば、小さすぎるフォントや煩雑な装飾は、読みにくさを招く可能性があります。これを解決するためには、フォントサイズを十分に大きくする・シンプルなフォントを選ぶ・行間や文字間を適切に調整するといった工夫が必要です。
マウスやタッチ操作が難しいユーザーにとって、キーボード操作は必須の機能です。そのため、タブキーを使って簡単にナビゲーションできるようにする・ショートカットキーを設定するなどキーボード操作をスムーズにする工夫が求められます。
ウェブサイトやアプリのアクセシビリティを高めるためには、しっかりとした検証が欠かせません。デザインや機能を改良するだけでなく、それが実際にユーザーにとって使いやすいのかを確認する過程が必要です。この検証を怠ると、見た目だけが良く実際の使用感が悪いといった事態を招く可能性があります。
アクセシビリティの検証には様々なツールが存在します。例えば、「WAVE」や「axe」は、ウェブページのアクセシビリティを自動でチェックしてくれるツールです。また、「JAWS」や「NVDA」は、視覚障害者がどのようにウェブサイトを読むのかを模倣するスクリーンリーダーのソフトウェアです。これらのツールを活用することで、より厳密かつ効率的な検証が可能になります。
現代の社会において、ウェブサイトやアプリケーションは日常の一部となっています。そのため、全ての人々がこれらのサービスを平等に利用できるよう、法的な背景が整備されつつあります。デジタルアクセスの法的要件は、視覚や聴覚の障害者、高齢者など、さまざまなユーザーのニーズを満たすことを目的としています。企業やサービス提供者には、これらの要件を遵守し、アクセス可能なコンテンツの提供が求められます。
多くの国々で、デジタルアクセスに関する法律や規範が制定されています。例えば、アメリカの「アメリカンズ・ウィズ・ディザビリティーズ・アクト(ADA)」や日本の「障害者差別解消法」などが該当します。これらの法律や規範は、デジタルコンテンツのアクセシビリティを向上させるためのガイドラインを提供しています。遵守しなかった場合、法的な制裁や、ブランドの信頼低下といったリスクが考えられます。社会全体がデジタル情報の利用を拡大している中、法的な要件を理解し、適切に対応することは非常に重要となっています。
ビジネスの成功の鍵は、顧客の満足度に密接に関連しています。アクセシビリティを高めることで、より多くのユーザーにサービスや商品を利用しやすくすることができます。特に高齢者や障害を持つ人々も含めた幅広い層の顧客が、ストレスなくサービスを享受できる環境を整えることは、顧客満足度の向上に直結します。高いアクセシビリティは、リピート利用や口コミによる新規顧客の獲得にも繋がります。
アクセシビリティは、ブランドの評価にも大きく影響します。企業がアクセシビリティを重視し、それを実際のサービスに取り入れることは、社会的な責任を果たしているとの認識を与えます。これは、特に若い世代を中心に社会的な価値を重視する消費者からの評価が高まる要因となります。また、アクセシビリティに取り組む企業は、イノベーションや改善の意識が高いと見られることもあり、ブランドの信頼性や価値を向上させる要素となります。
デジタル時代において、アクセシビリティは単なるオプションではなく、必要不可欠な要素として位置づけられています。多様なユーザーが情報やサービスにアクセスできる環境を整えることは、企業の社会的責任だけでなく、新たな市場の開拓やブランド価値の向上にも直結します。法的要請に応えるだけでなく、全てのユーザーにとって使いやすく、価値のあるデジタル体験を提供することを目指す持続的な取り組みが求められます。